どのような手順で非上場株式を売却をするのか?

  • 非上場株式の基礎知識

株式譲渡手続きの流れ

株式譲渡の手続きは、譲渡制限の有無によって大きく異なります。
非上場企業(非公開会社)の株式には譲渡制限がつけられていますので、ここでは、譲渡制限がある場合の手続きについてのみ解説します。

株式譲渡の承認請求

譲渡制限のある株式を売却する場合は、その株式の発行会社にその譲渡を承認をしてもらう必要があります。
譲渡承認の最初の手続きは、発行会社に株式譲渡承認請求書を提出することから始まります。

譲渡承認請求の手続きは、譲渡人から譲受人からのどちらからでも行うことができます。
譲渡人から行う場合は単独ですることができますが、譲受人から行う場合は、原則として譲受人と共同で承認請求を行う必要があります。

参考までに、株式譲渡承認請求書に記載すべき事項を記載します。(譲渡人から行う場合を前提にしています。)

①譲渡しようとする譲渡制限株式の種類および数
②譲り受ける者の氏名または名称
③発行会社が譲渡の承認をしない場合に、会社または指定買取人による買取りを請求する旨の記載 ※
※会社が株式譲渡を不承認とした場合、この旨を記載していなければそれ以上手続は先に進みませんが、この記載があることにより不承認であっても買取の手続に進むことができます。

取締役会または株主総会の承認

株式譲渡承認請求書が提出された場合、会社側では譲渡承認機関による決定を行う必要があります。
譲渡承認機関とは、定款に別段の定めがなければ、取締役会設置会社では取締役会、取締役会を設置しない会社では株主総会が該当します。

株式譲渡承認(不承認)の通知

会社は譲渡承認機関で行った株式譲渡の承認又は不承認の決定内容を、承認請求をした者に対して通知する必要があります。
その通知期間は、承認請求の日から原則2週間以内とされており、会社がその期間に通知をしない場合は譲渡を承認決定したものとみなされます。
そのため、譲渡承認をしない場合には、2週間以内に不承認の決定と通知を行う必要があります。

株式の譲渡が承認された場合

株主名簿の名義書換請求

譲渡が承認された場合は、株式の譲渡契約を正式に締結し、株主名簿の名義書換を発行会社に請求します。
名義書換請求を怠った場合、譲渡人が株主名簿に株主として記載されたままになっている可能性がありますので、必ず書換え請求を行ってください。
株主名簿の書換え請求は、原則として譲渡人と譲受人が共同して行う必要があります。

株主名簿記載事項の証明書交付を請求

株主名簿の名義書換が完了した後は、会社に対し株主名簿記載事項証明書の交付を請求することが可能です。
この株主名簿記載事項証明書は、譲受人が株主になったことを証明できるエビデンスの一つになります。

株式の譲渡が承認されなかった場合

会社(又は指定買取人)からの株式買取り通知

株式譲渡を承認しない場合には、会社または会社が指定した買取人がその株式を買い取ります。

会社による買取りの場合

会社が買取りを行う場合には、その買取について株主総会の特別決議を行う必要があります。
株式譲渡の承認については普通決議で足りますが、会社による株式の買取りは特別決議になります。

買取通知と供託

会社による買取りを行う場合、譲渡不承認の通知から40日以内に、株式を買い取る旨と供託金書類を合わせて通知します。
不承認通知から原則40日以内に会社がこの通知を行わない場合は、譲渡の承認をしたものとみなされます。
供託とは、株式会社の本店所在地の供託所に、一株当たりの純資産価額に買取予定の株式数を乗じて得た金額を預けることであり、その供託を証する書面を株式を買い取る旨と合わせて送付する必要があります。

株券発行会社の場合の注意点として、譲渡承認を請求した株主は、その譲渡予定の株券を供託所に供託し、会社に通知を行う必要があります。
具体的には、供託を証する書面の交付を受けた日から1週間以内に、対象になっている株式の株券を同じ供託所に供託して、遅滞なくその旨を会社に通知する必要があります。
株主が供託と通知を怠った場合は、会社は株式の売買契約を解除することができます。

指定買取人による買取りの場合

指定買取人が株式を買い取る場合には、取締役会設置会社では取締役会の決議が必要になり、取締役会を設置していない会社では株主総会の特別決議が必要になります。

買取通知と供託

指定買取人による買取りを行う場合、会社が株式譲渡の不承認の通知をした日から10日以内に、指定買取人として指定を受けた旨と、買い取る株式の種類および数を通知することとされています。

指定買取人が通知を行う場合も会社が買い取る場合と同様に、一株当たり純資産価額に買取予定の株式数を乗じて得た額を供託所に供託し、かつ、その供託を証する書面を合わせて交付する必要があります。

株券発行会社の場合には、承認を請求した株主が供託を証する書面の交付を受けた日から1週間以内に、対象になっている株式の株券を同じ供託所に供託して、遅滞なくその旨を指定買取人に通知する必要があります。
株主がそれを怠ったときは、指定買取人は株式の売買契約を解除することができます。

株式の譲渡価額についての話し合い

会社または指定買取人から買取りの通知があった後は、株式の譲渡価額について協議します。
協議を行っても譲渡対価で折り合いがつかない場合は、裁判所に対して売買価額の決定の申立てをすることができます。
この申立ては当事者の双方からできますが、申立てできる期限があり、会社または指定買取人から買取りの通知があった日から20日以内とされています。
その20日の期間内に申立てがない場合は、会社や指定買取人が供託した金額が譲渡価額となります。

裁判所で審査の上、最終価額が決定

裁判所が株式譲渡対価を決定する場合は、審問の期日を設け、関係者の主張を聞く機会が与えられます。
また、多くの場合裁判所は、和解を勧めてきます。
和解が成立すれば、裁判は終了です。

審理の過程で和解に至らず、最終的に裁判所が判断する場合は、会社の資産状態その他一切の事情を考慮して売買価格を決定することになります。
譲渡対価を決定するにあたって、裁判所は公認会計士等の鑑定人を指名して株価算定を依頼し、その株価を参考に譲渡価額が決定されます。
裁判所が決定した価格に不服がある場合は、即時抗告が可能です。

即時抗告をせずに抗告期間が経過した場合は、裁判所が決定した価格が確定することになります。

最後に

非上場株式(譲渡制限株式)を譲渡する場合の大まかな流れが上記のようになります。
譲渡承認請求で承認されれば、売買はスムーズに完了しますが、承認されないケースが多いです。
理由は、見ず知らずの株主を認めてしまえば、今まで閉鎖的に経営をしていた会社にとって見られたくない会社の裏側を探られることのリスクや、物言う株主であった場合や会社を乗っ取られないかという恐怖感から、承認しないケースが多いと思います。
承認してもらえないからといって売却を諦めるのではなく、不承認であっても上記の手続きで売却手続きを進めることができます。
売却したいと思われた方は、いつでも弊社にお問い合わせください。